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 バラスト水は、大型船舶が空荷の時に船体を安定させるために重しとして積み込む水のことです。これには主に海水が使われています。
 バラスト水を船内に取り込む際には、こし網を通すので魚やクラゲなどがタンク内に入り込む可能性は低いのですが、実際には動植物プランクトン、海藻の断片、底生生物や魚類等の幼生や卵などが混入しており、バラスト水に含まれる生物の種類は4500種類以上といわれます。
 バラストタンク中の水生生物の大部分は輸送中に死滅するものの、一部の生き残った生物は、到着した港でバラスト水とともに放出され、本来その地域に生息していない「外来種」として生態系をかく乱するなど、地域の環境に悪影響を及ぼすことがあり、実際に世界各地で問題となっています。
 つまりこのバラスト水問題とは、元々生息していた地域から離れた水生生物が、移動した先で増殖して人の健康や経済活動に影響を与えること、またその地域の生態系を変化させることを意味しています。
 バラスト水問題の主な被害には「生態系の破壊(移入種問題)」「経済活動(漁業活動等)への被害」「人の健康への被害(病原菌等)」などがあります。
 海水は、特別なコストもかからず積み込むのが楽で、荷を積載する際には港でも簡単に排水できるため、これ以外の物質でバラスト水を代替することは、コスト面からも利便性からも容易ではないといわれています。国際的なバラスト水排水規制の動きが高まる中で、これに対応するには、積み込んだバラスト水に含まれる微生物や細菌を除去することが必要とされています。

出典:国土交通省 報道発表資料(平成16年2月16日)

参考資料:バラスト水処理技術 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア 

 世界規模の環境問題であるバラスト水問題について、国際条約による世界統一的な規制を実現するため、国際海事機関(IMO)が中心となって、1980年代から国際的な議論が進められ、2004年2月にロンドンで開催された会議において、「船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)が採択されました。
 同条約では、船舶におけるバラスト水排出基準を示すとともに、バラスト水処理システムの搭載義務を定めています。
 これによると、2009年以降に新たに建造される、バラスト水容量5,000トン未満の船舶から順次、処理システムの搭載が義務付けられ、2017年までに全ての船舶に掲載義務が課せられるという内容になっています。
 また、条約発効後から装置を搭載するまでの間、原則として水深200m以上、かつ陸地から200海里以上離れた海域におけるバラスト水の交換が義務付けられています。
 同条約の発効条件は、30カ国以上の国が受諾し、かつその合計商船船腹量が世界全体の35%以上に達してから12カ月後に発効することとされています。2010年3月末現在、締約国は計22カ国、船腹量約23%であり、この条約の発効には至っていません。
 現在、多くの締約国が批准に向けて準備中とされていますが、各国が直面している問題として、国際海事機関(IMO)による決議「バラスト水管理システムの承認に関するガイドライン(G8)」の要求に適合するバラスト水管理システムの開発状況が挙げられています。

参考資料:生物多様性センター(環境省 自然環境局):船舶のバラスト水問題に対する取組について(PDF) 


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