農作物を生産する時に病気や害虫、雑草などの防除には、主に化学合成農薬が利用されてきました。しかし農薬利用による周辺環境や生態系への悪影響や人体の健康への影響に配慮して、年々環境や人体にに影響の少ない安全な農薬へのニーズが高まっています。 そこで注目を集めているのが、自然界に存在する微生物や天敵昆虫またそれらの抽出物を利用する生物農薬です。
主な生物農薬には、生きているウイルスや細菌、真菌、原生動物、線虫などを病害虫・雑草の防除に利用する「微生物農薬」と、ほかの生物を攻撃し、栄養分を摂取する天敵生物を病害虫の防除に利用する「天敵農薬」の2種類があります。
微生物農薬として最も広く普及しているのがBT剤(バチルス・チューリンゲンシスと呼ばれる微生物が生産するタンパク毒素を利用したもの)です。これは、チョウやガの幼虫に対して効果的に作用し、人や動物に対する安全性も確認されています。この他にも病原菌から植物を守る微生物も広く利用されています。
天敵農薬としては、寄生バチ、捕食性ダニ、テントウムシ、クモ等が害虫駆除に利用されています。
2009年に名古屋大学の研究グループが、飛べないテントウムシを人工的に作り出すことに成功しています。様々な農作物の害虫となるアブラムシを捕食するテントウムシは天敵農薬として有効ですが、屋外の畑では飛んで逃げるという問題点がありましたが、この飛べないテントウムシによって、解決することが期待されています。
ちなみに遺伝子組換え技術は使われていないため、このテントウムシの子どもは正常に羽がつくられ、生態系への影響はないそうです。
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